PICK UP ACTRESS 仁村紗和

PICK UP ACTRESS 仁村紗和

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

配信ドラマ「#声だけ天使」で
心に闇を抱えたヒロインをリアルに

 
 
――インスタに愛犬のとろろがよく出てきますね(笑)。

「もう息子のようにかわいがってます(笑)。自分のことをしながら犬と遊んだり、犬を連れてカフェや公園に行ったり……。行けるところにはどこにも一緒に行ってます。溺愛に近いですね(笑)」。

――普通にペットショップで見つけたんですか?

「そうです。ワンちゃんを飼うのはずーっと夢だったんです。東京に来てから、本当にいろいろなところにいろいろな子を見に行きました。なかなか飼いたくなる犬がいなかったんですけど、あの子を抱いた瞬間にすごくフィットして、相性の良さを感じました」。

――なぜ“とろろ”と?

「山芋とろろっぽい色で、赤ちゃんのときはもうちょっとトロトロしていたんです。食べ物の名前が良かったから“とろろ”にしました」。

――AbemaTVオリジナルドラマ「#声だけ天使」でヒロインのさくらを演じてますが、“陰があるところ”を監督に買われてキャスティングされたとか。

「自分では裏表がない人間のつもりですけど、見た目は年齢・性別・国籍不詳と言われるんです(笑)。多分しゃべらなければ謎の人物で、そういう部分が陰に見えたのかなと思います」。

――イメージ的には確かにミステリアス系かも。

「求められるのはアンニュイな雰囲気のものが多いので、第三者からはそういうふうに見えるみたいです。実際はよくしゃべりますし、全然違いますけどね」。

――国籍も普通に日本(笑)?

「『アジア系?』とか『ヨーロッパ?』とか言われますけど、実際は大阪生まれで、おじいちゃんもおばあちゃんもみんな大阪です(笑)」。


――とはいえ、心に傷を負ったさくら役にはやっぱりピッタリな感じがしました。

「監督と顔合わせしたとき、ああいう子を探していると聞いて、陰があるというところで『自分、イケるんじゃない?』というのはありました(笑)。でも、さくらちゃんのような役はやったことがなかったので、監督に見つけてもらった感じはします」。

――インスタには「なかなか表現するのが難しく、たくさん悩んでました」とありましたが、それは心の闇の部分で?

「そうですね。そこを出しすぎても、悲劇のヒロインになってしまうので。普通の女の子に見えるけど普通の女の子ではないようにするのが微妙で、すごく難しかったです。自分の中では、台詞を話すときにあえてヘンな間を作ったり、しゃべってるときにヘンなタイミングでヘンなところを見たり、細かいところで表現してみました」。

――さくらは普段はちょっと奧手くらいの女性に見えますが、急に男性を突き飛ばしたりしてました。

「そうなんですよね。急にそういうところが出ちゃったりするんです」。

――役作りのために本もいろいろ読んだとか。

「同じような経験をした女の子の人生が書かれた本を読んで、悲しくてしんどかったです。私は役を演じるとき、身内や周りに似た人を探します。でも、さくらちゃんと似た人はいなくて……。監督からもいろいろ資料をもらって、本と一緒に読んだんですけど、そういうことをしたのは初めてでした」。

――演技に活かせたところはありました?

「ありました。さくらちゃんが大好きだった絵から離れた気持ちがわかって、もう一回挑戦するのは勇気がいることだったから、私も演じていて、さくらちゃんと一緒に成長していけた感じがします」。

――現場に入った時点から、さくらモードになっていたような?

「そうではなかったみたいです。私、慣れてくると関西弁が出て、監督に『イメージが壊れるからやめて』と言われてましたから(笑)。ドラマと全然関係ないおちゃらけた話をして笑っていて、カメラが回ったら、さくらちゃんになってました」。

――そういう切り替えはできるタイプ?

「そうしないと、多分ダメなんだと思います。のめり込んで役に入るタイプではないのかもしれません」。

――シーンでいうと、どの辺で難しさを感じました?

「さくらちゃんが自分の過去に向き合おうとするときが来るんですね。トラウマを作った絵の先生に会いに行って、そこでまた衝撃の事実を知るんです。そのあたりのシーンはさくらちゃん的にもキツかったですし、私的にもしんどかったです」。


――そういうときは、さすがに撮る前から集中していて?

「そうですね。そこで泣く場面があって、初めてなくらい、なぜか泣けませんでした。わりとお芝居で泣けるようになってきたんですけど、その日は物理的に待ち時間がすごく長くて、何度もトイレに行って、体の水分がない状態で挑んでしまって……」。

――涙を出すのに関係します?

「関係あると感じました。たくさん水を飲んでトイレに行かないのも大事だと、自分の体のことを知りました。監督がずーっと隣りにいてくれてホッとしましたけど、最後は涙が出ないことに悔し泣きして終わりました」。

――普段は感情の起伏は大きいほうですか?

「楽しいとか悲しいのは結構出ちゃいます。楽しいときは歌ってたり(笑)」。

――普通に道とかでも?

「はい。あと、ちょっと踊ってたりします(笑)」。

――さくらは会ったことのない主人公のケンゾウの声に癒されてますが、そういうことって、あると思います?

「私も家族の声を聞くと安心するので、あるんじゃないかと思います。母親の声で落ち着くから、風邪をひいたときとか用もないのに電話したり……。うちのワンちゃんも父や兄の声が大好きで、わかりやすく寄って行きます(笑)。私の声より、男性の低い声が好きみたいで」。

――声だけで繋がっているケンゾウの存在が、自分の中で大きくなるのもわかると?

「今の時代だからこそ、あるのかなと思います。アプリとかいっぱいあるじゃないですか。だから、今っぽい感じがしました」。

 
 

役と向き合う時間はしんどさもあって
撮り終わってクッときて涙が出ました

 
 
――撮影はもう全話終わったそうですが、クランクアップのときの達成感は大きかったのでは?

「こんなに長い期間、連続ドラマを撮ったのは初めてだったんです。さくらちゃんと向き合う時間はしんどい部分もあったので、終わってホッとして、クッとなるものがありました。花束をもらって、涙が出ました」。

――やっぱり、さっきも出ましたが、しんどさもあったと。

「ありました。本当に今までやったことのない役だったので、『私で大丈夫かな?』というのもあったし、家に帰っても『どういうふうにやっていこうか?』とか『どんなシーンにしたらいいか?』と考えたりもしてました」。

――ケンゾウたちの声優学校とかのシーンは、紗和さんも完成してから観ているんですよね?

「そうです。毎回新鮮で、すごく楽しみです。みんな本当に一生懸命で、喜怒哀楽も激しくて、うらやましく思う部分もあります」。

――オーディションに落ちることは、紗和さんも経験していて?

「何度もあります。悔しいですけど、落ち込むより『自分に合わなかったんだな』と思うようにしています。『見返してやる!』と思うときもありますけど(笑)」。

――紗和さんはもともとダンサーを目指していたんですよね?

「はい。父親がずーっとダンスをやっていて、その影響で中学生の頃からダンスを始めました」。

――CMをやっているうちに、女優志向になったとか。

「きっかけはCMでしたけど、お芝居をちゃんとやりたいと思ったのは、NHKの教育番組でした。同世代の女優さんもたくさん出ていて、どんどん演技への気持ちが増して」。


――映画はよく観ていたんですよね?

「それも父親の影響で、よく姉と3人で川の字になって、DVDやケーブルテレビで観ていました」。

――お父さんの趣味だと、大人向けの映画を?

「そうですね。怖いのも観ました。小さい頃だと『エイリアン』とかを観ました」。

――そんなの小さい頃に観たら、トラウマになりません?

「私は大丈夫でした。でも兄がダメで泣いちゃって、映画を観なくなりました(笑)」。

――「アデル、ブルーは熱い色」に感銘を受けたと聞きましたが、フランス映画も観るんですか?

「いろいろな国の映画を観ます。感動した映画はいっぱいあって、何が一番って選べないですよね?」。

――最近観た映画で印象的だったのは?

「飛行機の中で『僕のワンダフル・ライフ』という犬の映画を観て、隣りの席は全然知らない人だったのに、もう鼻水たらしながら泣いちゃいました(笑)」。


――特にどんな場面で泣けました?

「終始ですね。自分の犬と重ねちゃうところがあって、『とろろもこう思っているんだろうな』と考えたら、もう何かダメでした。たまらないですね」。

――女優さんが魅力的な映画ということで、挙げるとしたら?

「私は『川の底からこんにちは』の満島ひかりさんが好きだったりします。19歳のときにDVDで観たんですけど、あの役を嫌味なく演じられて、しじみ工場で『中の下でいい』とか言ってる満島さんが愛おしくなりました。ああいう役をできる人はなかなかいないですよね」。

――紗和さんの世代には若くて上手い女優さんが多くいますが、気になる人はいます?

「います。年下ですけど、杉咲花さんはすごいですね。『トイレのピエタ』とか観て、あんな若いのに、あの空気感を出せるなんて……と思いました」。

――紗和さんは女優を目指す上で、ケンゾウたちみたいな挫折感を味わったことは?

「ありますよ。自分のキャパシティの狭さに『なんでこんなことができないんだろう?』と苦しんだりします。先輩たちの背中を見ていて、『こういうふうにならないとダメだな。自分は小さいな』と思ってました」。

――仕事自体がなくて悶々とした時期はなかったようですが……。

「いや、上京してすぐは仕事が全然なかったので、アルバイトをしながら頑張ってました。事務のアルバイトで、電話を取ったり、掃除をしたり……」。

――ちなみに、太眉は昔からチャームポイントに思っていたんですか?

「昔はコンプレックスで、細い眉毛が流行っていたので剃ってました。今もチャームポイントにしているつもりはないんですけど、自分でも生命力を感じますし、そういう部分も大事かなと思います。みんなにも『絶対に剃らないほうがいい』と言われます」。


――もう流行には流されずに?

「そうですね。服とかも流行より、自分の着たいものを着てます」。

――マイブーム的なものはありますか?

「やっぱり犬と(笑)、あとは写真ですね。フィルムカメラで犬とか友だちとか、公園に散歩に行って植物とか撮ったりしてます。太陽の光を活かしたりしながら」。

――フィルムにこだわりがあるんですか?

「いつの間にか、インスタグラムもフィルムばかりになりました。スマホでも撮るんですけど、フィルムカメラってすぐ確認できないし、枚数も限られているから、1枚1枚が大事になるところがあって……。それで思い入れもあって、選んじゃうんでしょうね」。

――本格的にやりたい気持ちもあって?

「『個展を開いたら?』と言われることもありますけど、そこまでは考えてません。趣味で撮ってるだけなので。でも、勉強はしたいです」。

――仕事ではやっぱり、映画志向が強いんですか?

「ドラマも舞台もそれぞれ全然違って、全部に楽しさはありますけど、映画は去年1本も出てないので、今年はできたらいいなと思います。明るい役も結構やってますけど、いろいろな役をやりたいです。恋愛モノもだし、まだやったことのない家族モノとかもやれたらうれしいです」。


 
 


 
 

仁村紗和(にむら・さわ)

生年月日:1994年10月13日(23歳)
出身地:大阪府
血液型:O型
 
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2014年にスカウトされて芸能界入り。同年にNHK高校講座「ロンリのちから」(NHK Eテレ)に出演。2016年公開の「無伴奏」で映画初出演。同年に「明日もきっと君に恋をする。」(フジテレビ)に主演。他の主な出演作はドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理」(日本テレビ系)、「相棒 元旦スペシャル」(テレビ朝日系)、「ウツボカズラの夢」(東海テレビ・フジテレビ系)、「BORDER 衝動~検視官・比嘉ミカ~」(テレビ朝日系)、舞台「エレクトラ」など。ドラマ「#声だけ天使」(AbemaTV/月曜22時~)に出演中。映画「巫女っちゃけん。」が公開中。
詳しい情報は公式HP
 
 

「#声だけ天使」

詳しい情報は公式HP
 

 

 

 

 
 

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