PICK UP ACTRESS 森川葵

PICK UP ACTRESS 森川葵

PHOTO=厚地健太郎 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

映画「OVER DRIVE」で紅一点
普通の女性役で新鮮な演技

 
 

――「OVER DRIVE」で演じた遠藤ひかるはスポーツマネジメント会社の社員で、森川さんには珍しく、普通の大人の女性役ですね(笑)。

「そうですね。かなり普通です(笑)」。

――森川さんにとっては、逆に新鮮な?

「めちゃくちゃ新鮮でした」。

――役への取り組み方もいつもと違いました?

「違います。普段は自分から動き回って、いろいろ発信していくのが好きで、やりすぎることもありますけど、今回はラリー競技のメカニックとドライバーのお話なので、エージェント役の私が前に出すぎたらいけない。かと言って自分の存在を消してもいけないので、知らない世界に入って初めて見るものばかりで、すべてを見つめる立場というか、『何だろう?』という新鮮な気持ちを大事にしました」。

――ひかるは仕事で葛藤はありつつも、森川さんがよく演じる心に闇を抱えたような役ではなくて。

「確かに私はこれまで、ちょっと変わった不思議な感じの、闇を抱えた女の子の役が多かったので、周りで起きていることを見ているだけというひかる役は、逆にすごく難しかったです」。


――いつもは攻めの演技だけに、物足りないような?

「物足りないことはなかったんですけど、周りでいろいろ起きていく中で『私はこれでいいのかな?』というのはありました」。

――スーツを着る役も初めてでしたっけ?

「初めてです。『きちんとしなきゃ』という気持ちになりました」。

――さっき出たように「OVER DRIVE」はラリー競技のメカニックの檜山篤洋(東出昌大)とドライバーの檜山直純(新田真剣佑)の兄弟の物語ですが、ひかる目線だと、不本意な人事異動とか普通の社会人が男女問わず共感するところが多いと思います。そういった部分で、たとえば会社勤めをしている人に話を聞くとか、何か準備でしたことはありました?

「私は会社に勤めた経験はないので、はっきりわからない状態でしたけど、クランクインする前に監督から『ラリーのことは知らなくていいけど、“ザ・エージェント”という映画を観ておくように』と言われました」。

――トム・クルーズがスポーツ・エージェントを演じた映画ですね。

「それを観て、エージェントがどういうことをする人なのか、何となく掴みました」。


――ひかるは有望なゴルファーの担当を外されて興味のないラリーに回されて、「いずれ戻す」という口約束も……というところで、篤洋に「何もなくなっちゃいました」と言うシーンがありました。魂が抜けた感じでしたが、女優さんの仕事の中でも、そういう気持ちになることはありますか?

「自分がやりたいことが根本的にできなくなった経験はまだないです。でも、『こういう作品に出たいけど、出られない』ということは結構あります」。

――森川さんくらいいろいろな作品に出ていても?

「やっぱりあります。だから、そういう部分でひかるの気持ちはわかりました」。

――ひかるは上昇志向が強いんですかね?

「上昇志向も強いし、たぶん自分はできる人間だと思っているんです。でも実際はそこまでキャリアもないし、できることは本当はすごく限られていて……。自分を勝手に大きな存在だと思い込んでしまっているけど、世間をそんなに知らないし、何でもできるわけではない。ただ、目の前に『やりなさい』と出されたものは、仕事としてきちんとやる女性かなと思いました」。

――「目の前の道をとことん進んでみようと決めたんです」という台詞もありました。そこも森川さん自身と重なる部分でした?

「重なりましたね。私もすごく自信を持って、いろいろできると思っているわけではないですけど、『ちょっとはできるかな』というのはあって……。でも、現場に行ってみるとうまくできないことはあるので、『まず目の前のことを』というのは一緒です」。

――ラリーについてはあえて勉強しなかったとのことでしたが、撮影の中で初めてマシンの走りを目のあたりにしたような?

「そうですね。あと、宣伝番組でコルシカ島にWRC(世界ラリー選手権)を観に行きました。本当に車が走っているギリギリの近い距離まで行けるんです。柵とかもなくて、自分が道路に出ちゃったら、そこに車が突っ込んできて轢かれちゃうこともあり得るくらいで、『本当にここで観ていて大丈夫なの?』という感じでした。でも、車が通り始めてからは、『うわっ! 行けっ!』みたいな気持ちのほうが強くなって、怖いというより楽しかったですね」。

――他のスポーツを観戦していても、熱くなるタイプですか?

「私はスポーツをあまり観ませんし、熱くなるタイプではないです。たぶん車のエンジン音や爆音で、熱くなったんだと思います」。


――自分で車の運転はするんですか?

「一応免許は持ってますけど、普段は運転はしないですね」。

――ハンドルを握ったら飛ばすタイプだったり?

「いやー、そこは安全運転で(笑)」。

――ラリーカーがカッコイイという感覚はありますか?

「何か芽生えました。車ってあれで完成されたものだと思っていたから、撮影の中で人の手であそこまでバラバラに解体できるのを見て、メカニックの面白さみたいなところでちょっと興味が湧きました」。

 
 

「攻めなきゃ勝てない」というのは
自分も思っていて前に進んでいます

 
 

――映画では、レース中にメカニックたちが時間勝負でマシンの整備にかかるところで、ウロウロしていたひかるが突き飛ばされるシーンがありました。

「『どいて!』って本気でバーンと押されて、『アーッ!』となって、何回も撮るうちに、ちょっと折れそうになりました。『そんなに強く押さなくても……』って(笑)」。

――他のキャストはほぼ男性でしたよね。

「最初は『他に女の子はいないんだ……』って心配でした。でも、東出さんにはずーっとお世話になっているので、『東出さんがいるなら大丈夫』となって、現場にいやすかったです」。

――ひかるは篤洋のことが気になっているようでしたが、劇中での彼のような男性は森川さんも良いと思います?

「落ち着きがあって包容力もありそうだし、安心できそうでいいなと思います」。

――トラブルメーカーの直純のほうは?

「一緒にいると楽しそうだけど、どんどん心配になりそうですね」。


――直純は天才ドライバーで森川さんも天才的な女優さんだから、理解できるところもあったのでは?

「いやいやいや。そんなことはまったくないです。ただ、直純が『攻めなきゃ勝てねえんだよ!』と言うところがあるじゃないですか。私も『攻めなきゃ勝てない』『自分の中でどんどんチャレンジして前に進んでいかないとダメになる』みたいに考えている部分はあります」。

――それであれだけ多彩な演じ方が生まれるんでしょうね。森川さんは直純みたいにわがままではないでしょうけど(笑)、スタッフへの感謝は忘れない感じですか?

「感謝してますけど、それがどれくらい表に出せているのか。本当に自分の力だけでやれているとは思ってなくて、支えられていることはわかっています」。

――今回、役とはいえ、スタッフ側に立ったからこそ見えたものはありました?

「ありましたね。今までもマネージャーさんたちと一緒にやっている感覚はありましたけど、実際どういう仕事をしているのか、ハッキリとは知らなかったんです。エージェントというマネージャー的な役をやってみて、『きっと裏で私のことをいろいろ考えてくれていたんだな。私もこうやって支えられているんだろうな』と思いました」。

――定番の質問ですが、特にお気に入りのシーンというと?

「会見で直純と(北村)匠海くんが演じるライバルの彰が並んでコメントしていたシーンで、彰が『2番になるためにやってきたんじゃないんです』と言うじゃないですか。あれはカッコイイなと思いました。ああいうことをハッキリ言えるのは、すごく魅力的です」。


――自分が出ているシーンだと?

「初めのほうのラリーで車が走ってきて砂埃をかぶるところは、車にあれだけ近い距離で見られることがパッとわかるし、私は耳をふさいでましたけど、それだけ迫力があって音が大きいのも伝わる。あの1シーンだけでラリーがどういうものか、説明なしでもわかる気がするので、いいなと思います」。

――耳をふさいでいたのも演技というより……。

「リアルにすごく音がデカかったんです」。

――「OVER DRIVE」というタイトルにも掛けて「限界を超えて、共に駆けろ!!!!」というキャッチコピーが使われていますが、森川さんは限界を超えて何かに挑んだことはありますか?

「限界というものがわからないし、考えたこともありません。だから、自分の中で限界がどこにあるかも知らなくて、越えたことがあるのかもわかりません」。

――なるほど。映画は6月1日公開で、森川さんの23歳の誕生日も近づいてきますね。

「23歳って普通に考えたら、いい大人になってくる年齢ですよね。みんな社会人になって会社に入ったり働いているので、自分も真面目に、ちゃんと仕事としてやらなきゃいけないことがいろいろあると思います」。

――今までも真面目に仕事としてやっていたのでは?

「楽しんでいる部分のほうが多かったので、きちんとやらなきゃいけないところは、仕事という意識を持ってやっていきたいです」。

――梅雨にもなりますが、雨のオフの日はどう過ごしますか?

「晴れても雨でも変わらず、引きこもりです(笑)。編み物をしているか、ボーッとするか、動画配信サイトで映画を観るか……。そんな感じですね。晴れていても外には行きません」。


――仕事に使うエネルギーを溜めていると?

「ああ……。そういうことにしておいてください(笑)」。

 


 
 

森川葵(もりかわ・あおい)

生年月日:1995年6月17日(22歳)
出身地:愛知県
血液型:不明

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2010年に「Seventeen」(集英社)の専属モデルとしてデビュー。2012年に女優デビュー。主な出演作は映画「渇き。」、「おんなのこきらい」、「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」、「恋と嘘」、「リバーズ・エッジ」、ドラマ「ごめんね青春!」(TBS系)、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジテレビ系)、「賭ケグルイ」(MBS・TBS)、「明日の君がもっと好き」(テレビ朝日系)など。映画「OVER DRIVE」は6月1日(金)から公開。6月30日(土)よりスタートのドラマ「バカボンのパパよりバカなパパ」(NHK/初回19:30~、2~5回20:15~)に出演。
詳しい情報は公式HP
 

「OVER DRIVE」

詳しい情報は「OVER DRIVE」公式HP
 

 

(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会
 
 
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