PICK UP ACTRESS 岡野真也

PICK UP ACTRESS 岡野真也

PHOTO=河野英喜 HAIR&MAKE=杉本妙子(ひつじ)
STYLING=瀬川結美子 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

青春群像映画「高崎グラフィティ。」で
結婚するはずの彼氏に不信感を抱く役

 
 

――岡野さんはもう、自分で出演作選びに関わっていたりするんですか?

「事前に台本を拝見することはあります。でも、『高崎グラフィティ。』はオーディションでした。私にとってオーディションは、楽しみに行く場なんです」。

――受かるか落ちるかわからないオーディション自体が、楽しむ場だと?

「いろいろな監督さんとお会いできたり、お会いしたことがなかった役者さんとお芝居できるので、好きなんです。特に今回は川島(直人)監督と年齢が近くて、オーディションから和気あいあいとしていて、何の気負いもなく楽しんだ記憶があります」。

――最初から寛子役で受けたんですか?

「はい。でも私は見た目のイメージから、明るい寛子と共通点がない気がして、どうしようかと思って、あまり穿かないミニスカートにロックバンドの女王蜂のTシャツを着て行ったんです。少しでも寛子のイメージに近づけようとしたんですけど、監督はいまだに『あれは奇抜だった』と言ってきます(笑)」。


――どんな役でもつかみ取るつもりで受けるんでしょうけど、寛子役はやりたい度合いが強かったとか?

「私はご一緒する監督さんとの雰囲気を大切にしていて、この作品はさっき言ったようにオーディションの部屋に入った瞬間から和気あいあいとしていたので、いいなと思いました。あと、以前から『MI-CAN』(3分以内の未完成映画の予告編によるコンテスト)のことを耳にしていて、その第1回のグランプリ作品の本編なんです。そういう企画モノも私は大好きだから、ぜひ参加したかったです」。

――脚本自体にも惹かれるものはありました?

「オーディションの段階では抜粋したところしか読んでませんけど、そこでやったのが、寛子が幼なじみの美紀とイザコザを起こすシーンと、結婚するつもりだったバイト先の店長とのことで同じクラスの直樹に救ってもらうシーンでした。そのふたつを読んだとき、最近の青春映画とは違う熱い感じがして、面白いなと思いました」。

――岡野さんは宇都宮出身ですよね。高崎とは東京への距離感とか環境とか、近いものを感じたこともあったのでは?

「確かに近くて、地元感が強かった分、やりにくさがありました。仕事をしている感覚ではなくなるというか……」。

――感覚がわかってやりやすいのではなくて?

「何となく、育った地元と同じ馴染みある空気の中だと、演技のスイッチを押せない感覚が私にはありました。もちろん高崎は面白かったですし、(群像劇の中心の)5人の街という気持ちで撮影中は馴染んでいましたけど、撮休になるとちょっと苦しいというか……。だから、一度東京に戻っていました。他の作品では地方撮影に行きっぱなしでもまったく平気なのに、今回は珍しく帰らずにはいられなくて……。それも『高崎グラフィティ。』のテーマだった田舎感と関係があったように思います」。

――“田舎”と言っても東京からそこまで離れてるわけではなく、地元ですべて完結できる地方都市です。

「自分もそういう街で育ったからこその感覚なんでしょうね」。


――寛子は高校を卒業したら地元で結婚して幸せになろうとして、美紀(佐藤玲)は夢のために上京することを決めていました。そういう選択は、宇都宮の若者も直面するものですか?

「私は元から仕事をやっていた上で東京に出てきたのでわかりませんけど、上京した地元の友だちと話すと『まだ戻りたくない』と言いますね。でも寛子はたぶん、そこまで地元に固執していたわけではないと私は思ってます。他の選択肢が見つからなかったから、地元で幸せになる方法を取ろうとしていたのかなと思います」。

――岡野さんは中学時代に女優デビューしていますが、高校は地元だったんですか?

「地元の高校に通ってました」。

――寛子は美紀が他の子とケンカしそうになるのをなだめたり、バランス感覚のある大人の振る舞いをしていましたが、岡野さんの高校時代と比べると?

「私はもう仕事をしていて感覚は違いましたけど、寛子のほうが立派だと思います。私は友だちとのつき合いで距離が詰められなくても、『仕事があるからいいや』って逃げていたところがありました。寛子にはそういう逃げ道がなくて、いかに友だちや彼氏とうまくやるかという高校時代に日々直面する出来事に対して、まっすぐぶつかっていましたから。偉いなと思います」。

――川島監督の「撮影日記」では、高崎で取材を受けた際の岡野さんについて「しっかりしてたな」とありました。その辺は寛子に重なる気がします。

「どうなんでしょうね? 今回はいわゆる普通の高校生役じゃないですか。でも、私も監督も普通ではないから、こういう仕事を選んだわけで……。だから『普通って何だろう?』というところから監督と議論しました。人それぞれ答えは違うだろうし、そのあたりが寛子を演じる上で特に難しかったです」。


――その議論の中で、方向性は生まれたんですか?

「『こうしよう』ということはなかったです。ただ『難しいね』と共感しました(笑)。そこはそこで置いといて、私は5人の中でいかに生きるか一生懸命やっていて、最終リハのときに監督にポロッとひと言、『寛子は直樹の女バージョンだと思います』と言ったんです。そしたら『ああ、それだね』と返ってきました」。

――直樹(中島広稀)は「今が楽しければいい」という感じの、一見チャラいムードメーカーですが、2人とも根っこで場の空気を大切にしていますね。

「そこでひとつの共通認識ができて、寛子が演じやすくなりました」。

 
 

大人だと言われても子どもでいたくて
グジグジしているのは青春なのかなと

 
 

――寛子の周りの美紀や他の友だちは、表面上は仲良くしつつチクチクやり合って、ぶつかりそうになるのを寛子が取りなしていましたが、ああいうヒリヒリした感じは女子の中でリアルにあることですか?

「そういう女性が集まる場に行くと、私は床から5cmくらい浮いていると友だちに言われます(笑)。あまり関わらないようにして、ぶつかるのを回避しているように見えるみたいです。だから、実情はよくわかりません」。

――意識して、そういう回避術を使っているんですか?

「無意識ですね。かなりの平和主義なので、なるべく自分はいないような空気を出しています(笑)」。

――寛子は友だちのことはあれだけ引いた視野で見られるのに、同棲も躊躇する店長とずっと結婚する気でいたのは、どういうことだったんでしょうね?

「焦っていたのかな? 美紀は自分の夢があって東京に行く。寛子は特に勉強ができるわけでもないし、母親はスナックをやっていて、自分の選択肢は年上の彼氏に頼るしかない。もちろん店長のことは好きだったと思います。だからこそ、何も見ないようにしていた。『私には彼がいるから大丈夫』って、自分に暗示をかけているような気がしました」。


――店長とすごくイチャついてました。

「そうでしたね。ヘタレでダメな感じの店長を私は客観的に見て、『なんで寛子は目を覚まさないのかな?』と思ってましたけど(笑)。目の前のことに真っすぐで、疑いたくない気持ちがあったんでしょうね」。

――寛子でも他の登場人物でも、自分の高校時代の気持ちと重なる場面はありました?

「どうだろう? ちょっと遅いんですけど、大学時代に彼らと同じようなことを考えていました。普通の大学で学んでいたので、周りのみんなは就活したり、ゼミに入って勉強を続けたり、まったく違う方向に行ったり、いろいろな選択肢を持っていて……。スーツを着たみんなを見て、自分はこの仕事をしているにも関わらず、一瞬『私はどうしようかな?』と考えてしまったんです。そういう波は高校のときより感じました。そこで美紀のように『でも、私は私』と思ったりもしました」。

――5人が卒業式の夜に河原で花火をしたりアーケードを走ったような、青春っぽいことはしてました?

「まったくなかったですね(笑)。卒業式のあともすぐ家に帰りました。つき合いでカラオケに1時間くらいいた覚えはありますけど(笑)」。

――青春したかった……とは思います?

「それはありますね。制服で他校の文化祭に行きたかったのが一番です。自分の文化祭はあまり楽しかった記憶がないですね。周りにいる人たちだけの世界だったから、他の高校を見ておきたかったです」。


――美紀役の佐藤玲さんは「自転車で彼氏と2人乗りをしてみたかった」と話してましたが、恋愛系でやっておきたかったこともあります?

「まあ、そうですね。周りの子はみんなワイワイ、キャッキャしていて、たとえば宿泊学習の夜に『今日、○○くんに告白しようかな』とか言ってたり、今思い出すとニヤニヤしてきますけど(笑)、そういうのを私もやっておけば良かったと思います」。

――今回は卒業式直後からの話でしたが、岡野さんが高校生役をやるのは、もう最後のほうですかね?

「そうだと思います。そろそろ年齢的に離れてきたので。でも今回は、玲ちゃんとか周りもほとんど同い年くらいだったし、監督も年齢が近くて『自分が育った地元の同級生に向けて、この映画を届けたい』と言っていたので、『だったら私たちの感覚で高校生をやればいいのかな』と思っていました」。

――高校生らしさを出すために、何かを意識したわけではなく?

「そうですね。とりあえず5人で一番若い(萩原)利久くんに『今、何が流行っているの?』とか、たくさん聞きました。利久くんはいつも元気で、私たちとの差は歴然としていました(笑)」。

――でも、岡野さんもまだ青春してませんか?

「してますよ。仲の良い友だちと『大人に慣らされているけど、子どもでいたい』と話してます。25歳って狭間の年齢で、大人だと言われたら大人でも、まだグジグジしていたいところがあって……。そういう話をしているときに『青春なのかな』と思います」。


 
 


 
 

岡野真也(おかの・まや)

生年月日:1993年2月22日(25歳)
出身地:栃木県
血液型:A型
 
【CHECK IT】
2005年に「スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックス」でファイナリストになり、2007年にドラマ「介助犬ムサシ~学校へ行こう!~」(フジテレビ系)で女優デビュー。これまでの主な出演作はドラマ「アゲイン!!」(MBSほか)、「ボク、運命の人です。」(日本テレビ系)、「ブラックリベンジ」(読売テレビ・日本テレビ系)、映画「飛べないコトリとメリーゴーランド」、「下衆の愛」、「ゆらり」、「EVEN ~君に贈る歌~」、舞台「ストックホルム」など。映画「高崎グラフィティ。」はアップリンク渋谷、イオンシネマ シアタス調布ほか全国公開中。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「高崎グラフィティ。」

配給:エレファントハウス
詳しい情報は公式HPへ
 

 

 

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